4月16日(火)記者会見 防災拠点の用地取得と県議の海外視察について

県庁記者クラブに先週の木曜日に記者会見資料を提出
1 大規模防災拠点の用地取得価格の検証を求める要望書
2 奈良県議の海外視察の自粛を求める要望書
  この件については、海外視察の中止を報告
 ・経緯
  県議10人がベトナムに海外視察を予定(既に、各派連絡会、議会で承認)
  この件について、先週金曜日に、議会事務局と視察参加者の代表から連絡があり、中止をするとの連絡を受ける。
  先週木曜日に議会事務局に海外視察の予定を確認をして、記者会見の資料を提出したのだが(急遽中止に至る)。

 1 大規模防災拠点の用地取得価格の検証を求める要望書
   山下知事に直接、要望書を渡す。
   NHK、奈良テレビ、毎日新聞等が報道
 (要望書の全文)
1 大規模防災拠点の用地取得価格の検証を求める要望書

  奈良県知事山下様             
                       見張り番・生駒(オンブズマン) 代表幹事 阪口  保
大規模広域防災拠点整備の用地取得価格の検証を求める要望書
 本県は、令和4年5月30日、奈良開発興行(株)及び阪合部山林自治会と土地等の売買に関する契約書を締結しました。
奈良開発興業(株)へは3,102,428,873円、阪合部山林自治会へ527,943,821円を支出しており、両方で支出総額が3,630,372,694円となります。
奈良開発興業(株)へ支出した3,102,428,873円の内訳は、土地代金735,861,573円、立木取得補償金4,754,600円、損失の補償金2,361,812,700円
(建物補償金、工作物補償金、生産設備補償金、立竹木補償金、営業廃止補償金等)となっています。 
一方、阪合部山林自治会へ支出した527,943,821円の内訳は、土地代金520,954,121円、立木取得補償金6,989,700円となっています。
本事案は、不動産鑑定、ゴルフ場の土地評価についての土地評価額適正審査会(3回)、ゴルフ場の補償についての補償適正審査会(2回)を経て用地
取得を履行しました。
しかし、過去に生駒市の総合スポーツ公園用地取得においては、高額な鑑定を行ったとして不動産鑑定士、市長が逮捕された事例もあります。
今般の用地取得(補償金等)にあたって、複数の県民から用地取得の価格が異常に高いのではないのかとの意見が見張り番・生駒に寄せられています。
以上のような状況を鑑み、山下知事には、五條市の大規模広域防災拠点整備の用地取得価格について、公金の支出が適正であったのかを検証する第三者
委員会の設置を要望いたします。
2 奈良県議の海外視察の自粛を求める要望書
   奈良県議会議員
  (ベトナム視察参加予定議員各位)
                     見張り番・生駒(オンブズマン) 代表幹事 阪口  保
 令和6年6月3日(木)~6月8日(土)の間、奈良県議会議員の10名の議員がベトナム視察4泊6日間を予定されています。
 今般の海外視察に要する費用額総額は、6,569,559円となっています。
その内訳は、10名の議員の参加費用6,376,199円と自宅から関空までの交通費及び1日当たりの日当費が193,360円となります。
海外視察費用は、奈良県議会海外調査派遣要領に基づき、一人当たり旅費の定めがあります。但し、視察費用の原資は県民の税金です。
 本県においては、平成26年5月25日~30日の間、トルコ共和国に4人の県議が海外視察を行ったのを最後に、約10年海外視察が行われていませんでした。
 私達は、議員による公費を使っての海外視察は原則として不要と考えています。
また、この10年間に限っても奈良県議会においては、ベトナム人の奈良県における就労について、議論された経緯もありません。
ベトナムでの調査を必要とする政策課題が本県の政策提言・政策立案機能を高めることに繋がるのか。さらに、10名の多数の方が参加する必要があるのか。
航空機のビジネスクラスの使用が必要なのか等について疑問を持っています。
見張り番・生駒(オンブズマン)には、県民から海外視察に批判的な声が届いています。
自治体の財政状況は、好転しているとは言い難く、県民の生活も厳しい状況におかれています。
 議員各位におかれましては、要望書の趣旨を理解して頂き、海外視察の自粛を求めるものです。
 

議第121号 奈良県太陽光発電施設の設置及び維持管理等に関する条例の一部を改正する条例案に反対討論

議第121号
奈良県太陽光発電施設の設置及び維持管理等に関する条例の一部を改正する条例案に反対討論を致します。
まず、奈良県太陽光発電施設の設置及び維持管理等に関する条例が制定された経緯についてです。
本県では、平群町、山添村でメガソーラーの設置について地元住民から反対運動がおこりました。どちらも山の中腹の山林を伐採し、大規模太陽光発電施設を設置するというもので、下流域の住民は、自然破壊、土砂災害等の不安があるという事で、反対されました。
私は、山添村の住民の方々の相談を受け、令和3年9月28日の本会議で、山の中腹の山林を伐採し、造成することにより、下流域の住民に土砂災害等の被害が発生する恐れがあり、被害を防ぐ為に、規制の条例をつくることを荒井前知事に求めました。
令和4年6月2日の本会議では、早急に条例をつくる必要があると荒井前知事に発言しました。
また、山添村の「馬尻山のメガソーラーに反対する会」が令和3年11月19日に約1万人の署名を集め、荒井前知事に署名を提出しています。署名提出時には、荒井前知事との面談も行われ、地元の思い等を伝えられていました。
このような経緯の下、本県は、当初のガイドラインの作成から、より実効性の高い条例の制定に変更されました。
この条例は、環境政策課が、令和3年12月から条例制定にとりかかり公布まで1年あまり要しています。
その間に、1か月かけてパブリックコメントを実施し、県民の意見を聴いています。その意見応募に204件の意見提出があり、そのうち山添村から約100件の意見提出がありました。
今までにない多くの方がパブリックコメントに意見を寄せ、県民の意見が凝縮されているといっても過言ではありません。
令和5年3月27日に、奈良県太陽光発電施設の設置及び維持管理等に関する条例を公布、半年間の周知期間を経て令和5年10月1日に施行されたものです。
今回、議第121号の条例改正案を提案された議員の方で、メガソーラーを規制する条例の制定を求めて県議会の本会議で質問された方はいません。
また、令和5年10月1日に施行後、この半年間で条例の不備を本会議で指摘された議員もいません。突如、このような時期に改正案を提出されたのが不思議でたまりません。
一方、本県の環境政策課には、県民から、条例の公布、施行後も条例についての意見等はなかったと伺っています。
今般の条例改正案には山添村の「馬尻山のメガソーラーに反対する会」の方も、反対であるとのことです。
本県の施策に関する基本的な計画、指針等の策定及びこれらの重要な改定については、パブリックコメントの実施が必要であります。但し、議員提案は、奈良県においては、パブリックコメントの対象となっていません。
しかし、今回のような条例改正は、県議会の本会議等で審議し、県が条例改正(案)をつくり、パブリックコメントを実施して改正していくべきです。
もしくは、議員の議員提出条例においては、パブリックコメント手続要綱等を作成し、議会がパブリックコメントを実施すべきです。
一年かけて条例(案)を検討し、パブリックコメントがなされ、県民の意見を反映して条例制定したものを、パブリックコメント(県民の意見)を聴かずに改正することは、県民無視に繋がります。
次に、条例改正案の問題点を指摘させていただきます。
一つ目は、第9条第2項で「必要な措置を講じ、地域住民等の理解を得るよう努めなければならない。」の規定を「地域住民の意見を反映させるために必要な措置を講じなければばらない」と変更されましたが、地域住民等の理解を得ることと、地域住民の意見を反映させることの差異が分かりません。
また、意見の反映とは、地域住民から具体的にどのような意見を取り入れることなのでしょうか。
さらには、第4条第2項では、「地域住民等の理解を得るよう努めなければならない。」との規定が残っていますので、第9条第2項と第4条第2項との規定と比較すると整合性にかけます。
二つ目は、第10条第2項を追加し「知事は、設置許可をしようとするときは、当該設置許可に係る事業区域の全部又は一部をその区域に含む市町村の長その他の関係市町村の長から意見を聴き、その意見を尊重しなければならない。」となっています。
市町村長と地域住民の意見は、メガソーラーの許可を巡って対立している事例があります。事実、山添村では、反対住民と村長が対立していました。
市町村の長その他の関係市町村の長から意見を聴き、その意見を尊重することとありますから、市町村の長の発言権が増すこととなります。
当然、地域住民の意見が反映されない事も考えられます。今回の条例改正案は、将来、メガソーラーの設置を緩和することに繋がる可能性もあります。
 さらには、その他の関係市町村の長とは、どこまでの範囲を示しているのか不明確です。
 最後に、改正附則関係において、「公布の日から施行する」こととなっていますが、本件条例改正案は、知事の許可が必要な範囲を広げる等、規制を変更する内容を含んでいることから、半年ほどの周知期間が必要であると考えます。
 私は、条例改正案の手順(パブリックコメント)の不備、条例改正案の内容の不明確な箇所、市長村の長の権限を強めていることから、この条例改正案に反対です。
 以上で反対討論をおわります。

生活保護に係る住民監査請求(小紫生駒市長等に損害賠償請求)

023年8月31日
〒630-0288
奈良県生駒市東新町8番38号
生駒市監査委員 殿
                       〒630-0134  
奈良県生駒市あすか野北3-1-3
                         住民監査請求者代表
阪口 保
    他15名
                        (別紙請求人目録記載の通り)

住民監査請求書

第1 申立の趣旨

  生駒市長は、(1)元生駒市福祉事務所長影林洋一(2015年度~2019年度)に対し1045万0267円(後述するAに対する返還金913万6016円+後述するBに対する返還金131万4251円の合計)、(2)同石倉真由美(2020年度)に対し73万8785円(後述するCに対する返還金)を請求するとともに、(3)小紫雅史に対し、1118万9052円(後述するA~Cへの返還金の合計)を損害賠償請求するとともに、生駒市によって、生活保護利用者らの健康で文化的な生活が脅かされることのないよう再発防止策を定め、これを公表することを求める。

第2 申立の実情
1 本請求の概略
  生駒市においては、同市内在住にかかる生活保護制度の利用者(A~C)が、後述する年金時効特例法にかかる特例の対象者であったことが明らかとなった際、厚生労働省から、5年以上前の遡及年金については生活保護法63条にかかる返還対象としてはならない旨の連絡がなされていたにもかかわらず、これを無視し、A~Cから、根こそぎ返還させるに至った。ところが、昨年、これが露見するや、A~Cに対し、違法な返還額に利息を付して支払うことを余儀なくされるに至った。
  本住民監査請求は、上記のような違法な取扱によって、生駒市が蒙ることになった損害について、生駒市長及びその担当職員に対し、その賠償を請求するよう求めるものである。
  また、ここ数年、生駒市の生活保護行政に関しては、同制度の利用者から過度に抑圧的となっているとの声が寄せられている。また、実際、生駒市においては、生活保護制度の利用を申請した者に対し、これを却下した処分が、奈良県によって取り消されるといった事案も生じている(甲5)。今回の件は、たまたま生じたものではなく、生駒市における保護行政全般に根ざした問題と見なさざるをえない。そこで、上記の賠償請求とともに、再発防止に向けた積極的な取組も求めるものである。
2 当事者
(1) 請求人らは、いずれも生駒市民である。
(2) 生駒市は、普通地方公共団体である(地方自治法1条の3)。
  生駒市長は、同市に関する事務を管理・執行している(地方自治法148条)。
  小紫雅史(以下「小紫」という)は、2015年4月27日から現在まで生駒市長の職にある。
(3) 生駒市福祉事務所は、社会福祉法14条1項の規定に基づき、生駒市に設置されている(生駒市福祉事務所設置条例(昭和46年10月26日条例第23号)1条)。
  生駒市福祉事務所は、生駒市生活支援課にかかる事務を分掌している(生駒市福祉事務所処務規則(平成25年3月29日規則第20号)2条2項)。したがって、生活保護法にかかる事務は、同事務所が分掌することになる。
  生駒市福祉事務所長は、「生活保護法第63条の規定による被保護者が返還する金額の決定に関すること」に関して、生活保護法19条4項、及び地方自治法153条2項の規定に基づき、生駒市長より権限を委任されている。
  ただし、生駒市福祉事務所長は、上記権限に属することであっても、「異例又は重要と認められるものは、あらかじめ生駒市長の指揮を受けなければならない」とされている(以上について、生駒市福祉事務所長に対する事務委任規則(昭和46年11月1日規則第18号))。
  ちなみに、影林洋一(以下「影林」という)は、2015年度から2019年度にかけて生駒市福祉事務所の所長の地位にあった。また、石倉真由美(以下「石倉」という)は、2020年度、同事務所の所長の地位にあった。
(4) 生活保護利用者A、同B、同C(以下「A」「B」「C」という)
  いずれも生駒市内在住にかかるもので、生活保護法にかかる各種扶助制度を利用、または利用していたことがあるものである。また、いずれもが、厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律(平成19年法律第111号。以下「年金時効特例法」という)にかかる特例の対象者である。
  なお、A乃至Cの正確な住所氏名は、プライバシーの関係もあるので、厳密に特定することは控える。ただし、後述するように、本請求との関係では、そもそも厳密な特定までは不要である。
3 生活保護費の違法な返還請求とその返還に至る経緯
(1) 年金時効特例法の施行と厚生労働省からの事務連絡の発出
  2007年7月6日、年金時効特例法が施行される。
  また、同年12月28日、厚生労働省社会・援護局保護課長は、「生活保護受給者の「年金記録問題」への対応について」と題する事務連絡を発出した(甲4。以下「本件事務連絡」という)。
  その内容は、下記の通りである。

1 年金加入記録の確認等について
    ※省略
2 年金記録の訂正や判明により、年金が増額される被保護者及び新たに年金受給資格を得られる被保護者への対応について
    ※第1段落、第2段落は、省略
  なお、年金が遡及して支給された場合の取扱いについては、以下のとおりとするので留意されたい。
(1) 遡及して支給された年金のうち、5年以内の年金について
  従来通り、法第63条に基づく費用返還請求の対象となる。(法第63条による費用返還が決定された日から遡って5年間分の保護費相当分が対象。なお、原則として全額が返還対象となるが、当該世帯の自立を著しく阻害すると認められるような場合においては、一部返還額を控除しても差し支えないので留意されたい。(生活保護手帳(別冊問答集)問450参照))。
  なお、当該年金額が、返還対象となる保護費相当分を上回る分については、収入認定の取扱となる。
(2) 遡及して支給された年金のうち、5年以上前の年金について
  法第63条による返還対象とせず、保護の要否の判定、あるいは保護費の算出上、支給月において収入認定するものとして取り扱うこと。(ただし、6ヶ月以内で分割して収入認定する取扱いも可能。)
(2) 生活保護利用者への保護費の返還請求
  A~Cは、それぞれ生活保護制度を利用していたことがあるところ、いずれも年金時効特例法の対象者であった。その結果、各々、遡及して年金が支給されることになったが、生駒福祉事務所長は、その際、本件事務連絡の内容を無視し、5年以上前の年金についても、生活保護法63条に基づき、生駒市に返還させた。
  具体的には、次の通りである。
(ア) Aについて
  返還日 2015年6月15日
  返還金額 670万3480円
 ※以上について、平成27年6月9日付生保第72号(以下「本件返還処分1」という)
(イ) Bについて
  返還日 2019年5月15日  
  返還金額 112万6061円
 ※以上について、令和1年5月15日付生保第47号(以下「本件返還処分2」という)
(ウ) Cについて
  返還日 2020年10月29日
  返還金額  69万9245円
 ※以上について、令和2年10月21日付生保第342号(以下「本件返還処分3」という)
  なお、本件返還処分1~同3により生駒市が返還を受けた生活保護費については、後述するように、都道府県及び国の負担に応じて、生駒市から、各々に対し、さらに返還されている。
(3) 違法な返還請求の発覚
  ところが、2022年6月、生活保護費の管理の問題が生駒市議会において取り上げられるなどする中で、外部からの指摘を受け、A~Cに対し、本件事務連絡を無視した返還請求を行っていたことが明らかとなった。
(4) 違法に返還させた保護費及びこれに対する利息の支払
  2022年9月13日、生駒市福祉事務所長鍬田明年(以下「鍬田」という)は、A~Cに対する各返還処分を取消し、同月16日、生駒市は、同人らに対し、次の金額を支払った。
(ア) Aについて
  返還金元金 670万3480円
  利息    243万2536円
  合計    913万6016円(甲1)
(イ) Bについて
  返還金元金 112万6061円
  利息     18万8190円
  合計    131万4251円(甲2)
(ウ) Cについて
  返還金元金  69万9245円
  利息  3万9540円
  合計     73万8785円(甲3)
  以上、A~Cに対する支払の合計は、返還金元金(違法返還請求額)が852万8786円、利息が266万0266円、総合計が1118万9052円となった。
4 法律関係の整理
(1) A~Cへの返還請求の違法性について
  生活保護法63条は、「被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたときは、保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して、すみやかに、その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。」と定める。
  ここで、同法63条が、返還額について、一律にその受けた保護金品に相当する金額全部とするのではなく、具体的な算定方法を定めることなく、保護の実施機関に一定の裁量を認めているのは、全額返還を原則としつつも、保護金品の一部が被保護者の自立及び更生に資する形で使用された場合には、その返還を免除することが被保護者の自立及び更生を助長するという生活保護制度の目的に適うこと、保護金品の全額を返還額とすることが被保護者の生活を著しく圧迫する場合には、被保護者世帯の自立を阻害し、生活保護制度の趣旨に反する結果となり得るからである。つまり、同法により返還を求める金額の決定は、もともと保護の実施機関による自由裁量ではない。
  さらに、本件事務連絡は、5年以上の遡及年金については、同法63条による返還の対象とはしない旨を明記している。
  したがって、影林によるA及びBに対する法63条に基づく返還請求(本件返還処分1及び同2)、石倉によるCに対する返還請求(同3)は、いずれも違法である。その意味で、昨年、鍬田が、A~Cに対する返還処分を取り消したこと自体は正当である。
(2) 故意・過失について
(ア) 影林及び石倉について
  影林は、本件返還処分1及び同2を行った。また、石倉は、本件返還処分3を行った。しかし、いずれも違法な処分で、後日、取消を余儀なくされている。
  そもそも、生活保護法63条の適用における年金時効特例法による遡及年金の取扱については、本件事務連絡に明記されている。これが、生駒市ないし生駒市福祉事務所の中で、どのような形で共有されていたのかについて、現時点で、請求人らにおいては、詳らかではない。しかし、その内容の重要性に鑑みれば、影林及び石倉に限らず、担当職員間において、容易に確認できる状態でファイリングされていたと考えるのが自然である。
  ちなみに、生活保護を利用するかどうかは、例えば、医療費の負担方法なども含め、対象者の生活に大きな影響を与えるが、対象者自身が生活保護制度について十分な知識や経験を有していることは稀である。したがって、生駒市福祉事務所において、生活保護法63条を適用し生活保護費の返還を検討するにあたっては、もともと極めて慎重な調査・検討が求められる。同条にかかる裁判例も集積している。
  今回も、例えばAに関して言えば、同人に対する生活保護費には多額の医療費(健康保険制度の適用のない10割負担にかかるもの)が含まれていたところ、生駒市福祉事務所の違法な取扱の結果、上記3(4)の返還を受けたとしても、結局は、生活保護の廃止後、本来、健康保険制度を利用していれば必要なかった多額の返還を求められる結果となってしまっている。しかも、遡及年金の金額も670万3480円と高額である。生駒市福祉事務所において、「1人1人の生駒市民の社会生活を支える」という意識が鈍麻していなければ、本件事務連絡の存在には、必ず気がついたと考えられるが、残念ながら実態はそうではない。
  現時点で、その具体的な経緯は明らかではないものの、結果として、本件事務連絡による注意喚起は無視され、違法な行政処分がなされてしまった。その責任は重大であり、影林らには、故意、少なくとも重過失が認められる(平成29年改正前地方自治法243条の2、同年改正後は同条の2の2)。
(イ) 小紫について
   小紫は、生駒市長として、予算の執行等の「財務会計上の行為を行う権限を法令上本来的に有するものとされている者」(最判昭和62年4月10日民集41巻3号239頁)に該当する(地方自治法148条、同法149条)。もっとも、上記の通り、生駒市長は、生駒福祉事務所長に、「生活保護法第63条の規定による被保護者が返還する金額の決定に関すること」に関する権限を委任している。
  しかし、このような場合であっても、委任を受けた職員の財務会計上の違法行為を阻止すべき指揮監督上の義務に違反し、故意又は過失によりその補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止しなかったときには、やはり、損害賠償義務を負うことになる(最判平成5年2月16日民集47巻3号1687頁)。しかも、本件返還処分1~同3のように、「異例又は重要と認められるものは、あらかじめ生駒市長の指揮を受けなければならない」とされていることは、上記の通りである。年金時効特例法にかかる遡及年金を生活保護法63条との関係でどのように処理するのかは、その返還金額が高額であることも相まって、「異例又は重要」にあたることは、論を待たない。
  ここで、本件返還処分1~同3に関しては、いずれも小紫が生駒市長に就任した後の出来事であり、その経緯の詳細は明らかではないものの、小紫の指揮の下に行われたと考えるのが自然である。
  以上の事実に鑑みると、小紫において、故意又は過失が存在したことは明らかであり、生駒市に対し、損害賠償義務を負っている。
(3) 生駒市に生じた損害について
  影林及び石倉によって違法な返還処分がなされた結果、生駒市において、返還金として受領した金額に加え、利息分についても、A~Cへ返還することを余儀なくされた。
  したがって、A~Cへの返還金額をもって生駒市に生じた損害金額と考えることができる。
  もっとも、生活保護制度は、市町村のみならず、都道府県、国の費用の支弁も定めている(生活保護法70条以下)。したがって、上記返還金額のうち、後日、奈良県、国から補填を受けることができた部分については、損害金額から除外される。ただし、現時点において、その詳細は明らかでないことから、本請求の申立段階においては、一応、返還金額全額を損害として取り扱っている。
(4) まとめ
  以上によれば、生駒市は、(1)影林に対し1045万0267円、(2)石倉に対し73万8785円、(3)小紫雅史に対し、1118万9052円の損害賠償請求債権を有している。
  また、上記(1)と同(3)、同(1)と同(2)の債権は、それぞれ不真正連帯債権の関係にある。
5 監査請求期間の起算点について
  本請求は、生駒市長において、相手方らへの損害賠償請求権の行使を怠っていることを理由とするものであり、地方自治法242条2項にかかる監査請求の期間制限には服しないと考える(いわゆる「真正怠る事実」に該当する)。
  もっとも、百歩譲って考えても、2022年9月16日までは、実際上、債権の行使は不可能であったのであり、2023年9月16日までは、監査請求が可能である(最判平成9年1月28日民集51巻1号287頁)。
6 まとめ
  請求人らは、地方自治法242条に基づき、生駒市監査委員において、厳密な調査を実施の上、各関係者に対し、必要な法的措置をとることを求め、本請求に至ったものである。
以 上

疎明資料
 
甲1号証      生活保護法第63条に基づく費用の返還請求の取消しに伴う返還について(令和4年9月13日生生第392号)(同日付生駒市福祉事務所長鍬田明年作成)
甲2号証      生活保護法第63条に基づく費用の返還請求の取消しに伴う返還について(令和4年9月13日生生第394号)(同日付生駒市福祉事務所長鍬田明年作成)
甲3号証      生活保護法第63条に基づく費用の返還請求の取消しに伴う返還について(令和4年9月13日生生第396号)(同日付生駒市福祉事務所長鍬田明年作成)
甲4号証      「生活保護受給者の「年金記録問題」への対応について」(厚生労働省社会・援護局保護課保護課長平成19年12月28日事務連絡)
甲5号証      「県裁決、生駒市の処分を取り消し 生活保護申請却下された女性の審査請求で」(「奈良の声」2021年12月21日配信、同月23日更新)